機能性表示食品の有効性を評価する「研究レビュー」の適正化に向けて、消費者庁は届出ガイドラインを改正し、「PRISMA声明(2020年)」への準拠を求める方針を示した。PRISMA声明が現行の2009年版から2020年版に移行されることで、どう変わるのだろうか?
PRISMA声明2020のWEBサイト
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新たな評価方法の開発などを踏まえて2020年版が登場
PRISMA声明は、研究レビューとメタアナリシスの報告の質を向上させるために、2009年に策定された国際指針。
機能性表示食品制度では有効性を確認する手法として、研究論文を収集して総合的に評価する研究レビューが主流となっている。現行の届出ガイドラインは、研究レビューを第三者が適切に評価できるように、PRISMA声明(2009年)に準拠した形式で報告するように求めている。
端的に言えば、どのような手順で実施し、どのように評価して、どのような有効性を確認したのかについて、誰が見てもわかるように透明性を持った形で報告させるというものだ。
近年の新たな評価方法の開発などを背景に、PRISMA声明も改訂が必要となり、2020年版が策定された。これに伴って、機能性表示食品制度でも2009年版からの移行が急がれていた。
制度の開始以降、一部企業を除いて放置された状態
消費者庁の新井ゆたか長官は6日の定例記者会見で、研究レビューの更新を促すためにPRISMA声明(2020年)への準拠を求めると説明した。
研究レビューでは複数の研究論文を総合的に評価することから、有効性を否定する研究成果が発表された場合、評価結果に大きな影響を与える。このため、定期的な再検証が必要だが、機能性表示食品制度がスタートした2015年以降、一部企業を除いて研究レビューの更新は見られず、放置されたままだ。
さくらフォレスト(株)の景品表示法違反事件では、研究レビューが問題視された。不適切な研究レビューが機能性表示食品で横行している背景には、ランダム化比較試験のCONSORT2010や研究レビューのPRISMA声明への準拠が軽視されてきたことがある。不適切な研究レビューが消費者庁のデータベースでいったん公表されると、真似する企業が続き、今回の事件のように大量の届出で疑義が生じてしまう。
更新を容易にした「フローチャート」へ改訂
PRISMA声明(2020年)を見ると、2009年版からいくつかの改善点があり、研究レビューの「フローチャート」の改訂も重要なポイントとなっている。
改訂により、オリジナル(最初)の研究レビューと、その更新への対応をやりやすいようにした。既存の研究レビューを更新する場合には、先行研究にプラスする形で行うことから、2009年版と比べて更新への対応が容易になる。また、ハンドリサーチ(手作業による検索)で収集した論文の記載も明確化した。
フローチャートの改訂により、機能性表示食品に用いる研究レビューについても、今後は定期的な更新が促されることになる。
特に採択論文の本数が少ない研究レビューでは、否定的な研究論文が発表された場合、届け出た評価結果に疑義が生じる可能性が大きく、随時検証することが重要となる。
「エビデンス総体の確実性」の追加もポイントの1つ
「エビデンス総体の確実性」の評価方法・結果の報告を推奨するチェック項目が追加されたことも、重要な変更点の1つ。トータリテイー・オブ・エビデンス(肯定的な結果も否定的な結果も総合した評価)の観点から、研究レビューの信頼性が厳しく問われることになる。
このため、採択論文数が1報しかない研究レビューの場合、「確実性」の説明がつかないと指摘する声もある。
その他の変更点を見ると、研究論文の検索に用いたすべてのデータベースを対象に、詳細な検索式を記載するように要求。研究レビューを行ったレビュワーについては、その数や独立して行ったかどうかなど役割を含めて明確にすることとしている。
レビュープロトコールの事前登録に加えて、プロトコールとの整合性の記載も求めた。事前に取り組み内容がオープンになるため、届出ガイドラインの改正後、届出企業が十分に対応するかどうかが注目される。
(木村 祐作)
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