小林製薬の機能性表示食品が起因となった健康被害の発生を受けて、消費者庁は機能性表示食品制度を改正する。施行は2024年9月1日と25年4月1日の2段階に分けて実施される。今回の改正は多岐にわたり、通販会社などの販売事業者(届出者)の順守事項が多数盛り込まれた。
■本記事のセミナー動画は通販通信ECMO会員限定コンテンツとして公開中!↓↓
届出制を維持する一方で法令化
抜本的に制度を改正するが、届出制は維持される。その一方で、従来のガイドラインによる制度運用から法令化に基づく運用へと大きく舵を切る。
届出制を維持するため、制度改正後も引き続き、届出後に疑義が生じても、国が強制的に届出を撤回させることは困難と考えられる。しかし、ガイドラインの大部分を食品表示法に基づく食品表示基準と告示に落とし込んだことから、これに違反した届出者は機能性を表示できなくなる(機能性表示食品として販売できない)。
健康被害情報の報告とGMP管理の義務化
2024年9月1日に施行される施策として、健康被害情報の収集・報告の義務化、GMP(適正製造規範)による製造管理の要件化、容器包装の表示方法の見直しがある。
健康被害情報の収集・報告の義務化については、即日実施される。サプリメントや生鮮食品を含むすべての機能性表示食品が対象となる。義務化の範囲は、医師の診断を受けた情報であり、因果関係が不明でも速やかに報告しなければならない。医師が診断した情報ならば、一般消費者や薬剤師などから寄せられたものも含まれる。
厚生労働省は食品衛生法施行規則を改正し、届出者に健康被害情報の収集と都道府県知事等への報告を義務づける。違反した場合には、営業の禁止・停止を命じることが可能となる。
また、消費者庁では食品表示基準を改正し、都道府県知事等への報告と、消費者庁長官への報告を届出者の順守事項とする。違反した場合は、機能性表示をやめさせることが可能となる。
GMPによる製造管理の要件化については、2年間の経過措置期間を設ける。2026年9月1日から完全施行となる。対象は、サプリメント形状の機能性表示食品。消費者庁は食品表示基準でサプリメントを定義づける。GMP基準は告示で定める。海外の工場で製造された製品も対象となる。
実際にGMPによる製造管理を行うのは製造工場だが、届出者は製造工場でGMPによる管理が行われていることを確認し、その旨を届出資料に記載しなければならない。これは届出者の順守事項と位置づけられ、履行されない場合、消費者庁は食品表示法に基づく指示・命令が可能となる。
サプリメント形状の機能性表示食品の製造が、GMPによって管理されていることを確認するため、行政は製造工場に対して食品表示法に基づく立ち入り検査を行う。保健所が健康食品GMPに馴染みがないことから、当面は消費者庁が直接対応することになる。
現在、民間団体が健康食品のGMP認証サービスを提供しているが、今回のGMPの要件化とは関係しない。GMP認証を取得するかどうかは、各事業者の任意となる。
原料の安全性確保も強化する。小林製薬の問題では紅麹原料が健康被害の原因と疑われたため、国の検討会などで原料の安全対策も焦点の1つとなった。
GMPの要件化は、最終製品の製造工場が対象で、原料の製造工場は対象外となる。しかし、最終製品の製造工場ではGMPへの対応により、原料の受け入れ段階で、原料をチェックすることが求められる。
これに加えて、通知「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針」(別添1)を告示に落とし込む。これによっても、原料の安全性確保を強化する方針だ。
切り取り表示を禁止に
容器包装の表示方法の見直しも、2024年9月1日に施行される。GMPの要件化と同じように2年間の経過措置期間を置き、26年9月1日から完全施行となる。
表示方法の見直しは多岐にわたる。そのうち、届出者が特に注意しなければならない点がいくつかある。
まず、機能性を研究レビュー(論文を収集して総合判断する手法)によって評価した場合、届出表示の一部を切り取る表示方法が禁止される。もともと景品表示法の観点から問題視されてきたが、販売されている製品を見ると、「コレステロールを下げる」「内臓脂肪を減らす」といった切り取り表示、言い切り表示が横行している。
今回の改正により、そうした表示は禁止され、「本品には〇〇(成分名)が含まれます。〇〇には△△(機能性)ことが報告されています」と表示することが求められる。
また、「機能性表示食品」の文字を容器包装の主要面の上部に、線で囲んで目立つように表示することもルール化した。そのすぐ近くに「届出番号」を表示することも必須となる。
このほか、「摂取をする上での注意事項」にも適切な対応が必要となる。従来よりも、医薬品や他成分との相互作用などについて、より詳しく表示することが求められる。
来年4月から更新制を導入
2025年4月1日から施行される施策として、安全性と機能性の根拠に関する事項、順守状況の自己点検・評価と報告、届出日以降の科学的知見の充実などがある。これに加えて、新規の機能性関与成分への対応も始まる。
安全性・機能性の根拠については、届出後に機能性関与成分に関する新たな知見が得られた場合、遅滞なく消費者庁へ報告することが要件化される。
順守状況の自己点検・評価と報告は、「更新制」を意味する。これは、安全性と機能性の新たな知見の報告、GMPによる製造管理、健康被害情報の収集・報告などの順守状況について、届出者が自己点検と評価を行い、その結果を消費者庁へ報告するというもの。届出者は年1回、報告しなければならない。これを怠ると、機能性表示食品として販売することができなくなる。
新規の機能性関与成分への対応も注目される。小林製薬が販売した製品の機能性関与成分も新規成分だったことから、消費者庁では、届出実績のない新たな機能性関与成分については慎重に安全性を確認する方針を示している。
具体的には、専門家の意見を聞く仕組みを導入し、摂取上の注意点などについてアドバイスをもらうことになる。そうした対応には時間を要することから、従来の販売60日前の届出を販売120日前とする特例を設ける。
また、今回の改正では、「60日前」「120前」のカウント方法が営業日ベースであることを明確化した。
届出日以降の科学的知見の充実については、届出後に知見が充実した結果、機能性表示が適切でないと消費者庁長官が判断した場合には、機能性表示食品の要件を満たさないことになる。
(木村 祐作)
この続きは、通販通信ECMO会員の方のみお読みいただけます。(登録無料)
※「資料掲載企業アカウント」の会員情報では「通販通信ECMO会員」としてログイン出来ません。