【特別対談】(株)ダイレクトマーケティングゼロ 田村雅樹社長
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カゴメ(株) マーケティング本部 通販事業部 販売企画グループ原浩晃主任
通販・EC業界では、新規獲得施策に加えLTVを向上させる施策が重視されてきている。しかし、その手法は確立されているとはいえず、各社が手探りで取り組んでいるのが現状だ。そこで今回、通販・EC業界におけるCRMの在り方や施策について、コールセンターを活用した独自のCRM施策を展開し成果を上げているカゴメ(株)のマーケティング本部 通販事業部 販売企画グループの原浩晃主任と、通販CRMのプロフェッショナル集団である(株)ダイレクトマーケティングゼロの田村雅樹社長の二人に語ってもらった。今回から、上・中・下の3回に分けて更新する。
※当記事は上・中・下の下編です
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UI研究による行動ロイヤリティ向上も重要なCRM
――CRMを実施するにあたって、そのほかに重要なポイントはありますか?
田村:お客さんのストレスをフリーにする・利便性で満足してもらう、という「行動ロイヤリティ」もCRMを考える上でとても重要です。注文が面倒くさくないとか、レコメンドしてくれるとか、商品が到着するのが早い、といった利点の部分ですね。
原:お客さんにとってのマイナスをゼロにする、ということですね。
田村:おっしゃる通りです。UI(ユーザー・インターフェース)を研究して提供することも、CRMの観点から非常に重要だと思います。UIの研究とスピード改善は、ものすごい重要なので、組織でもUIの担当者のポジションを上げている会社さんもあります。それに、「行動ロイヤリティ」は計測が行動とリンクしやすいので追求しやすいというメリットもあります。
ユーザーにとっての「マイナス」要素をゼロへ
――「行動ロイヤリティ」という観点で、カゴメさんが取り組んでいることはありますか?
原:利便性という視点でいえば、外装段ボール箱の「開けにくさ」を改善したという事例があります。カゴメ通販のお客様は60代以上の方が多く、お客さまからコールセンターに届く声として、「開けにくさ」の指摘が多数ありました。
それを解消するために、ミシン目を入れて、力を入れなくても開けやすい外装段ボール箱に改良しました。開けにくいという事は、溜まる要因に繋がりますからね。
マイナスの気持ちをどう拾うかということが重要で、当社では定期購入をやめてしまった人に、やめた理由などをアンケートしたり、定期入会の初期段階で、お客さまをフォローコールし、お客様の不安の芽を拾って改善に繋げるようにしています。
田村:定期の離脱については、解約タイミングと解約意思決定タイミングのギャップを分析するというのも手です。解約意思決定のトリガーがいつ発生しているのかなどを探っていくのです。例えば、商品が余ってしまうことが解約理由として多い場合は、どのタイミングから余りが発生しているかを把握できるようにして、そのタイミングで何かの手打ちができるのがベストですね。
原:予兆を事前に捉える、ということですよね。
田村:その通りです。このあたりのテーマは深掘りすると非常に面白いポイントだと思います。ただ、当然ではありますが、そもそも商品がなぜ余るのかの分析も、もっと大事です。
「クチコミによる新規獲得」がクローズアップ
――通販企業が今取り組むべき、CRMの取り組みについてはいかがでしょうか?
原: 人が減り、モノと情報量が増える中で、「新規顧客を増やす」という従来の活動から、「既存顧客を大事にする事でLTVを拡大する、クチコミによる新規顧客獲得を増やす」という活動へのシフトはさらにクローズアップされていくと思います。
そのなかで、「顧客の体験や感情」の変化をとらえるカスタマーマネジメントの重要性はさらに増してくると思います。そのなかで、特に、熱量の高いファンをどう定義し、行動を捕捉し、売上との相関性を導くのか、の行動分析を定量・定性的にやっていくことがマストポイントになってくるのではないでしょうか。当社も試行錯誤中ですが、まだ他社さんも含め、この成功モデルを作り上げている企業さんの事例はあまり出て来ていないかなと思います。
田村:商品を愛用してくれる人が、ほかに人にも商品を勧めるといった「アンバサダー」のような人を増やす動きも強まってくるのではないかなと思います。数ある当社のクライアントさんの中でも、その分野についてはまだ手をつけられている会社は少ないのですが、新規の獲得効率が悪くなっている中で、お客さんに商品を広めてもらえるようになれば、「新規獲得>CRM」という観点はかなり大きく変わってくるのかなと思います。
もう1つ注目しているのは「タイミング」ですね。即時性というか。お客さまのマインドに何かの変化があった時に、即対応するということができないかなと考えているところです。CRMの重要視が強まっていますが、さらにその先に重要なポイントとして「いかにいいタイミングをキャッチできるか」が勝敗を分けるようになるのではないかと思います。
原:なるほど。ただ、最適なタイミングを捕捉するためにお客さまの行動をパターン化できるのか、という部分で難しそうですね。
LTVアップ因子の意図的な埋め込みがカギ
――最後に、今後通販業界が進みそうな傾向について、何か感じていることはありますか?
田村:今後はLTVの高いお客さまを、新規の低コスト獲得を実現するための取り組みが重要になってくると思います。そんな中で、LTVが高くなる因子を会社側が意図的にお客さまに埋め込んでいく、という手法に注目が集まるのではないかなと思います。
原:高LTVの見込めるお客さまが市場の中にどれだけいるかを、分析することも重要ですね。本日は、非常に勉強になりました。ありがとうございました。
田村:こちらこそ、ありがとうございました。
(了)
(古川寛之)
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カゴメ株式会社 マーケティング本部 通販事業部 原浩晃 主任
【プロフィール】
2002年カゴメ入社。営業部門で新規販路開拓をミッションに活動。備蓄ルート開拓にあたり、社内プロジェクトを立ち上げ、長期保存野菜ジュースの開発、販路開拓に成功。13年に通販事業部へ異動、ブランド担当兼、新規顧客獲得販促担当として、宣伝費が削減される環境下において、顧客獲得効率を3割改善しながら、獲得規模を1.4倍へ拡大する事に成功。17年1月よりフルフィルメント担当に異動し、コールセンターを中心としたCRM構築を推進中。
■カゴメ
株式会社ダイレクトマーケティングゼロ 代表取締役社長 田村雅樹 氏
【プロフィール】
早稲田大学法学部卒業後、「株式会社ベネッセコーポレーション」、大手化粧品会社を経て、2009年に通販専門のコンサルティング会社「ダイレクトマーケティングゼロ」を設立。通販化粧品・健康食品企業を中心に計500社以上の顧問・コンサルティングを行う。「AMIDAS」や「通販7指標必勝方程式」などの独自理論を打ち立て、クライアントの売上を20倍上げた実績をもつ。「DMA国際エコー賞」「ケープルズ賞」をはじめ「全日本DM大賞」などダイレクトマーケティングに関する賞を国内外で通算37冠受賞。著書に『ゼロからはじめる通販アカデミー』(ダイヤモンド社)がある。講演・寄稿等多数。
■ダイレクトマーケティングゼロ
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